ある物語のシーンです。日本を守ろうという若者のグループが、日本に敵対するグループのテロについての情報をつかみ、そのテロをおさえるにはどうしても、そのグループのある若者の父親の力が必要となりました。
しかし、その若者の父親は、そのグループの活動を快くは思っておらず、そこで活動している息子と父親との関係はあまりうまくいっていませんでした。
グループのメンバーたちは、その若者に「父親を説得してほしい」と頼みますが、「どうせ自分の言うことなど信じてもらえない」と難色を示します。
その時、メンバーの一人の女性が、「信じてもらえないようにしているのは、あなたの心ではないのか。あなたが『どうせ信じてもらえない』と思っているから、信じてもらえないのではないのか」と言います。その言葉を聞いて、その若者は信じてもらおうと決意して、父親の説得に向かいます。その甲斐あって父親の説得に成功し、テロを未然に防ぐことができました。
このシーンでは、「心の創造力」を表していると思います。「信じてもらえない」と思っている心が、父親に信じてもらいないという状況を、作り出してしまっているのです。これが心の創造力です。心は目に見えませんので、そこに創造力があることはなかなか実感できませんが、現実に、私たちは自分の身の回りで、心の創造力を無意識に使っています。
「自分はダメな人間だ」と思っていると、現実の世界ではどうしても、積極性が出ません。また、身の回りで起こる物事の中から、「自分はダメだ」と思ってしまうような事柄ばかり意識をしてしまいます。その結果、「やはり自分はダメな人間だ」と思い込んでしまいます。その心がさらに、「自分はダメな人間だ」という状況を創り出し、いわば「負のスパイラル」に落ち込んでしまっているのです。
逆に、「自分はやれる」と思っていたら、失敗しようがうまくいかないことがあろうが、そういうことはおかまいなしに、前に前に進んでいきます。その結果、自分が成し遂げたいことを実現してしまうことになるのです。
心の創造力がどうして、現実に作用するのでしょうか。現実を変えていくのでしょうか。それは、心に思い描いた方向に、人は行動していくからです。その行動が結果を生み出し、現実を変えていくのです。
例えば、「体を強くしたい」と心に思い描いたら、そうなろうと努力していきます。今の状況で、体を強くするために、自分にやれることをやっていきます。走り込んだり、腕立て伏せをしたり、スクワットをしたりするでしょう。そうすることで、現実に体が強くなっていきます。
もちろん、心に、「こうなりたい」「こうしたい」ということを思い描くだけではだめです。現実の中で、その思い描いた方向に努力していくことで、思い描いたことは実現していきます。
不登校の状況を変えるのに、この「心の創造力」を使うべきでしょう。というよりも、不登校の状況を変えていった親御さんは、この「心の創造力」を使っています。それは、二通りのやり方で使っています。
一つは、自分自身に対してです。不登校の状況が変わるまで時間がかかります。そのため、その長い時間に耐えられず、どうしても「この状況は変わらないんじゃないか」と弱気になってしまいます。絶望しそうになることもあるでしょう。そういう心の状態では、「不登校の状況を変えていこう」という思いになれませんので、状況を変えるための行動はどうしても弱くなってしまいます。
そんな時、「この状況は必ず変わる、変える」と自分の心に強くビジョンを描いていると、不登校の状況になかなか変化が見られない場合でも、耐えることできます。そして、状況を変えるための行動が力強いものになるでしょう。
もう一つの、心の創造力の使い方は、子供に対してです。これは、「不登校の状況を変えるために、子供を変えよう」という形ではなく、「子供の心をしっかりと理解し、その心の中にあるさまざまな悩みや苦しみを取り除いてあげよう」という形です。
心に創造力があると言っても、それは他人の心を無視したものではありません。あくまでも、他人の心を重視し、尊重して初めて、心の創造力は状況を変えることができます。特に不登校の状況では、子供の心の状態が非常に重要になります。その心の状態をよく見て、そこにどのような悩みや苦しみがあるかを理解することで、その悩みや苦しみを軽くする言葉をかけてあげることができます。そのような言葉をかけることで、子供の心の状態が変わっていき、それに伴って不登校の状況も変わっていくのです。そういう形で、心の創造力を使っていくのです。
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