前回のブログの引き続き、不登校の子供の心の状態に合ったコミュニケーションについて書いていきます。今回は、不登校の「転換期」と「回復期」です。「転換期」は、子供が外の世界に関心を持ち始める段階であり、「回復期」は文字通り、不登校の状況から脱出した段階です。
「転換期」においては、エネルギーがたまってきて、外の世界に関心を持ち始めてはいますが、それですぐに外の世界に出ていける状態にはなっていません。そのような状態のところに、親御さんが、「じゃあ、塾を見に行ったら」というふうに、背中を押しすぎてしまうと、子供は委縮してしまいます。
そのように子供の先回りをして、子供の背中を押しすぎてしまう親御さんの気持ちは分かります。それまでの間、場合によっては何年も家に居続けて、外の世界を遮断してしまったような子供の様子が変わり、外の世界に関心を持ち始めたら、それを見ている親御さんは嬉しさで心がいっぱいになるのも当然です。
だからこそ子供とのコミュニケーションでは注意が必要です。その嬉しさをセーブし、あくまで子供が主体的に、外の世界に進んでいくよう、コミュニケーションでは子供の意思を尊重すべきです。「外の世界に関心を持ち始めた」といっても、それは本格的に外に出ていきたいという意思ではないのでしょう。エネルギーが満ちてきて、家に居続けていることに「暇だな」と感じているのかもしれませんが、それが即、「外の世界に出ていこう」ということではありません。「あなたのペースで考えていけばいいから。今は心も揺れ動く時期だから、今日、元気が出ても、明日には『やっぱり家に居よう』となるかもしれない。そうなっても気にしないで、自分のペースで考えていけばいい」と伝えると、子供は「早く外の世界に出ていかなければ」というプレッシャーから自由になれます。
実際、この「転換期」においては、子供の気持ちは長続きしません。ある時は「塾に行ってみようかな」と言ったとしても、翌日には気持ちが落ち込んでいて、気持ちが後ろ向きになったように見えることがあります。親御さんが、子供の気持ちに左右されず、安定した心の状態を維持していたら、子供の気持ちが落ち込んだ時、親に対して申し訳ないという罪悪感を抱かずに済みます。
また、「転換期」においては、子供は自信を取り戻しているわけではありません。失った自信を取り戻すには、やはり小さな成功を積んでいくことが王道となります。そのため、コミュニケーションにおいては、「努力すれば実力が身につき、それによって結果が出てくる。その結果によって、自信は少しずつ戻ってくる。自分のできる範囲で、無理のない状態で少しずつ、努力していけばいい」ということを伝えていきます。
「失敗するかもしれない」と恐れていることもあるはずです。外の世界には関心はある、でも、「また失敗したらどうしよう」という恐れがあって、外の世界には踏み出せないでいます。
そのような場合は、「失敗してもいい。失敗からは学べることがあるし、そう考えたら、失敗はしっぱいではなくなる。完全に不登校の状況から脱するまで、何度か失敗してもいいや、くらいに考えてもいい」と、コミュニケーションの中で伝えていきます。不登校の子供には、完璧主義の傾向がありますので、最初から完璧に、失敗することなく外の世界に出ていくとは思わず、失敗を織り込み済みくらいの気持ちになれれば、外の世界に出ていくプレッシャーをいくらか抑えることができます。
「回復期」においては、不登校の状況から脱しています。ただ、外の世界に完全になじんでいるわけではありません。おそらく、なじむまでは緊張感をもっていると思いますし、実際、家に戻ってきたらどっと疲れてしまうこともあるでしょう。
この時期も、あまり干渉しすぎず、それでいて疲れや緊張の度合いを見てあげるということは必要です。また、あれもこれもと無理させず、やはり自分のペースで物事に取り組むようにしてあげることが、コミュニケーションの主な方針となります。得てして、この時期は頑張りすぎることになるので、「今はあなたのペースで、ゆっくり焦らずに歩んでいけばいいよ」と声をかけてあげることも、時には必要でしょう。
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