子供が不登校になると、親としてはやはり、「早く学校に戻したい」と思うでしょう。不登校の状況の中でずっと居続けることは、子供の未来が先細りすることになりますから、そのような思いを持つのは当然だと思います。そこには親としての愛情もあります。決して間違った思いではないです。
ただ、不登校の子供に対しては、「この子の悩みや苦しみを和らげ、希望を持たせてあげたい」という思いで接してあげてください。「早く学校に戻したい」という思いは抑えていただきたいのです。それは、不登校の状況を解決していくためには、子供の悩みや苦しみを和らげ、希望が持てるようにしていく必要があるからです。
ほとんどの不登校の子供は、何かをきっかけとして、何らかの悩みや苦しみを心の中に抱えています。きっかけは、いじめという比較的わかりやすいものもあります。人間関係で疲れてしまったというものもあります。勉強についていけなかったということもあります。思春期特有の、自意識の高まりによって、何かあったわけではないけれど気分が落ち込んだということもあります。そうしたことをきっかけにして、「自分はダメだ」「もう、自分の将来は終わりだ」「これから先、何も希望はない」というような悩みや苦しみを抱えているのが、不登校の子供の心の状態です。
そのような悩みや苦しみが心の中に存在している間は、前には進めません。不登校の状況の中でずっと過ごすことになります。「早く学校に戻ってほしい」と親が望むまでもなく、子供も分かっているのです。元の学校に戻るかどうかは別として、早くこの不登校の状況から脱出しなければならないことは、自分でもわかっているのです。それでも前に進めないのです。
そうした心の状態のところで、親がいくら、「早く学校に戻りなさい」「いつ学校に戻るの」と子供に話したとしても、子供は答えようとしないでしょう。それは答えられないからです。自分の心の中にある、悩みや苦しみを小さくしていかないと、将来の展望も何も描けないのです。
元不登校の子供が、動画やブログなどで、当時のことをふり返っていますが、「自分の悩みや苦しみなどの、心の状態を理解してくれなければ、前に進めなかった。理解してくれたからこそ、少しずつ前に進む気に慣れた」と多くの子供たちが語っています。子供たちにとっては、学校に戻れるかどうかということ以上に、悩みや苦しみを抱えている自分の心を理解してくれることの方が重要なのです。
そのような心の状態の子供たちに、「この子の悩みや苦しみを理解し、共感し、和らげてあげたい。そうして、生きる希望や自分自身に対する希望を持たせてあげたい」という思いで接したら、どういう反応を示すでしょうか。理解してほしいという子供たちにとって、大きな救いとなりますので、自らの心の扉を開いてくれるでしょう。
子供たちの心の扉が開いていなければ、親がいくら何かを伝えようとしても、子供の心の中に何も入っていきません。心の扉が開ければこそ、周囲の人が伝える言葉が、子供の心の中に入っていくのです。その言葉が徐々に、子供の悩みや苦しみを和らげていきます。
不登校の状況にある子供の何割かの子が、「親は、自分の気持ちを理解してくれない。悩みや苦しい気持ちを理解してくれようとせず、学校に戻ることしか言わない」という不満を抱いています。学校に戻ってほしい親の気持ちと、悩みや苦しみを理解してほしい子供の気持ちが、すれ違っているために、そういう不満を抱いているのです。
「だから、そういう悩みや苦しみは、学校に戻ればなくなるのに。不登校になってまで、そんな悩みや苦しみに直面することはないのに」と思うかもしれません。しかし、それは大人の言い分です。子供はそんなに、理性的に割り切ることはできません。悩みや苦しみを和らげてこそ、少しずつ前に進むことができると思っているのです。
「悩みや苦しみを和らげよう」という気持ちで子供と接することで、子供の抱えている悩みや苦しみに関心を持つことになります。それらがどういうものか、理解していくことになります。共感していくことになります。
それらを踏まえて、子供とコミュニケーションをとっていくと、その中での言葉は、悩みや苦しみを和らげる内容になっていきます。そうなれば、時間はかかるかもしれませんが、不登校の状況が変わっていきます。
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