前回のブログに続きます。前回は、エネルギーが満ちる、すなわち「充電」するのを待つだけでは、不登校の状況から脱出できない場合について書きました。それは、不登校に至るまでに辛い経験をして、学校に行くことが嫌になったり、意味を感じなくなったりしている場合か、あるいは不登校になってから、その状況で長い時間を過ごすうちに、「自分はダメだ」という自己否定感が大きくなるなど、マイナスの思いが増大したりして、エネルギーを充電するだけでは不登校の状況から出られない、という場合でした。
今回は、ではそういう場合に何をしてあげればいいか、ということをテーマに書いていきます。
結論から先に書きますと、子供たちが抱えている悩みや苦しみ、あるいは疑問を理解し、共感して、それらを解消していく言葉を、子供とのコミュニケーションの中で伝えていくことです。それが、充電しつつある子供に対して、してあげるべきことだと思うのです。
子供は、不登校に至るまでの状況や、不登校になった状況において、何らかのことをきっかけにして、悩み・苦しみ・疑問を抱えています。それは本当に、子供によってさまざまです。不登校の子供は、思春期に差し掛かっているか、思春期の真っただ中にいることが多く、特に悩みや苦しみ多い年代です。自分という意識が本格的に目覚めてきて、自己確立していく段階ですので、大人から見てそんなに大きなことでなくとも、悩んだり苦しんだりすることがあります。そういう年頃であればなおのこと、学校で何か自分にとって望ましくないことが起きれば、悩みや苦しみを抱くでしょうし、他の子供は普通に学校に行っているのに、自分は学校に行っていないという状況でも、そうした思いを抱くでしょう。
体に自然治癒力があるのと同様、心にもある程度、そういう力はあります。心の中にある悩みや苦しみを自分で解消していこうという力はあります。ただ、悩みや苦しみが大きければ、その力では解消できません。また、年齢が若いのでしたら、自分の悩みや苦しみに対して、どう答えを出していけばいいか、知識や経験の不足もあるので、難しいでしょう。子供一人では、いつまでも悩みや苦しみから抜け出すことができないことがあります。
そういう場合、子供が抱えている悩みや苦しみ、疑問に対して、大人としての知識や経験から来る言葉を伝えて、子供が答えを出すための出助けをしてあげるべきでしょう。子供一人では解消できない悩みや苦しみを、小さくしてあげることができます。
そして、その場合、子供が抱えている悩みや苦しみがどういうものか、できるだけ具体的に理解していくことが必要です。それらがまったく分からないのでは、どういう言葉をかけていくべきかがまったくわかりません。もし、それらが具体的につかめていればいいのですが、不登校の子供の中には、自分の心の内を周囲の人に打ち明けないことがあります。子供なりのプライドであったり、子供自身も理解していなかったりして、打ち明けない、あるいは打ち明けられないことがあるのです。
そのような場合は、子供との信頼関係をより強くして、親に打ち明けようと思ってもらえるようにするか、子供との対話で「こういうことを悩んでいるのではないか」と推測していくプロセスが必要です。
そうして子供の悩み、苦しみを理解したら、次に必要なことは「共感」です。もしかしたら、大人からすると、それほど大きな悩みや苦しみではないように見えるかもしれません。ただ、そのように考えてしまうと、子供に伝えるべき言葉に、子供の悩みや苦しみを解消する「感化力」がなくなってしまいます。どれだけ子供が悩んでいるか、苦しんでいるか、100%共感することはできないかもしれませんが、できるだけその心に寄り添うことです。
しかし、共感するだけで止まっては、子供の悩みや苦しみは解消されません。共感したうえで、どういう言葉を伝えればいいか、考えていくのが次に必要なことです。この段階が最も難しいかもしれません。言葉を伝える人が、どれだけ生きることについて考えてきたか、その人生観というか、人生哲学みたいなものが問われるからです。深く考えてきた人ほど、子供の悩みや苦しみを解消する言葉を紡ぎだしやすいです。
伝えた言葉が的を射たものであったとしても、それがすぐに子供の心の中に入っていき、その中にある悩みや苦しみを解消してくれるわけではありません。心が変わるのにも時間がかかるからです。伝えるべきは伝えて、子供が伝えた言葉について考え、納得するのを待つこともまた、必要になります。
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