子供が不登校になると、子供の心のケアをしていかなければならないと、解決を望む人は考えます。これはまったくその通りです。子供の心の中に、何かをきっかけにして悩みや苦しみがあり、それがある限り不登校の状況から出ていくことはできません。不登校の状況を解決していくには、子供の心のケアを行い、その中にある悩みや苦しみを取り除いていく必要があります。
そこで問題となることがあります。それは、子供の心のケアばかりが重視され、親御さんの心のケアがあまり重視されないということです。
相談機関によっては、「子供のことを優先させて、親御さんは元気でいてください。笑顔でいてください」とアドバイスすることがあります。間違いとまでは言えません。確かに、悩んでいるのは子供ですし、子供はまだ未熟なところがありますので、親御さんが子供のサポートをしてあげると、不登校の状況がいい方向に変わっていくのは間違いありません。
ただ、先ほど述べたように、親御さんの心のケアも必要なことがあります。子供のことを優先させるあまり、親御さんの心のケアを軽視、あるいは無視してしまうと、不登校の状況が変わっていかないことがあります。
不登校になると、もちろん子供自身は落ち込み、混乱しますが、それは親御さんも同じなのです。「子育てに失敗した」というふうにとらえてしまって、自分自身を責めたり、子供に対して申し訳ないという気持ちで落ち込んだり、将来について悲観的になったり、親御さんは親御さんで苦しい気持ちになるのです。
もちろん、すべての親御さんがそうなっているわけではありません。時々、肝の座った方がおられて、わが子の不登校に対しても心が揺らがず、「なんとかなる!」と信じていることがあります。あるいは、ご自身が不登校経験者であり、どうやってその状況から脱していくかを経験済みの場合も、心がさほど揺らがないことがあります。
ただ、たいていの親御さんはやはり、心が揺れ動きます。そのような心の状態のまま、子供に対して元気にふるまい、笑顔ばかりを見せ続けていると、そうした表面と内面とのギャップにだんだん苦しくなっていきます。その苦しさを抱えたままで子供と接していても、不登校の子供は特に、他人の心に敏感になっていますので、表面の笑顔や元気さよりも、内面の苦しさの方が子供に伝わる可能性があります。そうなると、「やっぱり自分のせいで、苦しんでいるんだ」と感じてしまって、子供がますます落ち込んでしまうこともあります。
また、不登校はどうしても長丁場になります。その間ずっと、親御さんが表面と内面のギャップに苦しむことになるとしたら、親御さんがまいってしまうでしょう。
親御さんも苦しんでおられるのでしたら、子供と同時に、親御さんへの心のケアが必要です。どういうふうに心のケアをしていくかは、親御さんの悩みや苦しみの内容によるのですが、子供にケアするのと同じように、「共感」が必要でしょう。特にお母様に対してケアする場合、この「共感」に重点を置くべきだと考えます。
人がもし困っている時や悩んでいる時、男性は解決策を聞くことを望むことが多いですが、女性は自分の気持ちに寄り添い、共感してくれることを望むことが多いです。わが子の不登校で、「子育てに失敗した」とより深く落ち込んでいるのは、お父様よりもお母様であることが多いので、親御さんの心のケアにおいてはまず、お母様に対する共感が重要になります。
その共感の時、何かアドバイスするよりも、話をよく聞くことがポイントとなります。これは、不登校の子供の話を聞く時と同じ注意点となります。こちらからつい、何かアドバイスしたくなることがありますが、相手がアドバイスを明確に望んでいない限り、アドバイスすることなく聞くこと、そしてその悲しみや苦しみを感じ取ることが重要です。
親御さんも自らの苦しい気持ちや不安な気持ちを、あまり表に出さない傾向があります。そういう思いを隠さずに話してくれたら、強い信頼関係ができていることになります。その信頼関係は、それ以降の心のケアにおいてカギとなります。
そうして親御さんの気持ちを聞くことで、親御さんも心が軽くなっていきます。静かに聞くことで、子供への対応などをアドバイスしなくても、親御さんの心が揺れ動いている時期は、親御さんの心は軽くなっていきます。
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