このテーマは前に書いたと思いますが、最近、お会いしたお母様から、ずっと前のカウンセラーから「愛情を与えてください」というアドバイスを受けたけれども、役に立たなかったとのお話をお聞きしましたので、再び取り上げます。まだ、「愛情を与えてください」というアドバイスをする人間が、結構いるのでしょう。私は、このアドバイスを不登校の親御さんにするのはまずいと考えています。
1 不登校についてピントがずれている
まず、このアドバイスは、「不登校になったのは愛情不足だから」という認識か、「不登校の状況から脱出するには愛情が必要」という認識に基づいています。
「不登校になったのは愛情不足だから」という認識は正しいのでしょうか。親が愛情を与えなかったから、子供が不登校になるのでしょうか。これは、「不登校になるのは子育てに問題があるから」という考え方に基づいている認識でしょう。
不登校になるのは、いくつかの要因が絡み合って起こることです。全国で19万人にもなる不登校の子供の中には、もしかしたら親の愛情不足で起きているケースもあるのかもしれません。しかし、親の愛情不足単独で起こっているケースは、非常にまれでしょう。ネグレクト(育児放棄)などがそのケースに該当するのでしょうか、そうなると子供は不登校になるよりも、不良化するのではないでしょうか。不登校の原因を、親の愛情不足にのみ、求めても、意味がないのです。
「不登校の状況から脱出するには愛情が必要」という認識でしたら、もう少し理解できます。ただ、それは当たり前です。愛情を持っているからこそ、不登校になったわが子のために、何とかしてやりたいと思うのです。不登校になったわが子のために、相談機関を探したり、不登校について情報を集めたりすること自体が、愛情の行動です。既に愛情を与えているのに、それ以上何をやればいいのでしょうか。
不登校の状況から脱出するには、愛情の有無が問題ではありません。既にすべての親御さんが愛情を持っているはずです。そうではなく、子供が心の中に抱えている悩みや苦しみを理解し。共感して、それを解消していく言葉をかけていくことが、脱出のために大切なことになります。
2 何をしていいか具体的に分からない
「愛情を与えてください」というアドバイスがまずい、二つ目の理由は、「何をしていいか具体的に分からない」ことです。普通の親御さんは、子供に愛情をもって接しています。それ以上、何をすればいいのでしょうか。
甘えさせたり、子供の望むことをやらせたりすればいいと解釈して、実行したものの、子供が幼児返りしてしまって、不登校の状況が悪化した、という話も時々聞きます。
原則、不登校の親御さんへのアドバイスは、何をすればいいか、具体的な内容を伴っている必要があります。「愛情を与えてください」はその内容が伴っていないのです。
3 逆効果になる危険性がある
先ほど少し触れましたが、子供を甘えさせ、何でも望むものを与えるなどの行動は、かえって不登校の状況が悪化し、逆効果になる危険性があります。
子供がゲームをすることを望むので、それに応えるのが「愛情を与えることだ」と考えて、子供が一日中、部屋にこもってゲームができるように、子供部屋にテレビを設置するなど、環境を整えた結果、部屋から出なくなってしまって、不登校が長期の引きこもりになってしまった、というケースもあります。不登校の親御さんが避けたいケースです。
もし、不登校関連の本などで、「不登校を解決するには愛情を与えること」というアドバイスがあったら、そのアドバイスにとらわれないよう、ご注意ください。
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