不登校の状況を変えていくためには、不登校の子供が抱いている「自己否定感」を軽くしていく必要があります。「自分はダメだ」という自己否定感を抱いている限り、それが軽くなっていかない限り、子供は前に進むことができません。しかし、自己否定感を軽くするよう働きかけることが、非常に難しいことです。
自己否定感を軽くするには、まず、「どういう」自己否定感を抱いているか、可能な限り詳しく知る必要があります。それは、不登校に至るまでの状況や不登校の原因にも関わることです。
人間関係の悩みで不登校になった場合は、子供が抱いている自己否定感はおそらく、人間関係によるものでしょう。「自分は、他人とうまく関係をもてない」「友達がいない」などのような自己否定感を抱いている可能性があります。
勉強を一生懸命に頑張ったのに結果が出せなくて、不登校になった場合は、「自分には才能がない」とか「努力してもダメな自分」という形で、自己否定感を抱いているかもしれません。
不登校になっていること自体に、「学校に行けていない自分はダメだ」という自己否定感を抱いていることもあります。他の子は普通に学校に行っているのに、自分は学校に行っていない、だからダメなんだいう自己否定感です。
不登校の子は、あまり自分の心の内を明らかにしない傾向があります。ですので、どういう自己否定感を抱いてしまっているか、親をはじめ周囲の人に明らかにしたがらないことがあります。そんな子供の心の内をよく見て、そこに抱いている自己否定感を具体的にとらえるのは、非常に難しいことかもしれません。ただ、できるだけ子供をよく見て、その個性についてよく考えて、どういう自己否定感を抱いているか、つかむように心がけることが重要です。
このように、自己否定感をできるだけ具体的につかむことで、どういうことを伝えれば
自己否定感が軽くなるか、方向を定めることができます。勉強についての自己否定感でしたら勉強についてのことを、人間関係についての自己否定感でしたら人間関係についてのことを、伝えていくことになります。
そのように個別的・具体的に伝えるべきことと同時に、自己否定感を抱いている不登校の子供全てに伝えるべきことがあります。それは、人間という存在についての素晴らしさや可能性です。
私は、人間には個性の違いや能力差は確かにありますが、それらを越えてすべての人間に共通する素晴らしさや可能性があると考えています。まず、人間は、自分の心を自分で決定できるということです。自分の心をどのような状態にするかは、その心の持ち主に任されていることであり、違う表現にすると「心の王国」を持っているということです。
そのようなことを聞くと、他人や環境からの影響を受けるのではないか、だから心は自分で決定できるということにはならないのではないか、と反論する方もおられるでしょう。その通りです、他人や環境の影響は確かに受けます。それは無視できません。
ただ、それによって最終的にどのような心の状態にするかは、やはりその人に任されているのです。例えば、親が十分に子育てをしない環境で育ったとしましょう。多くの場合は、その環境から親を恨んで非行に走ったり、人間嫌いになったりするでしょう。ただ、中にはその環境をバネにして、「ああいう大人にはなるまい」と反面教師にし、努力していく人もいます。その結果、社会に出て何かを成し遂げることもあります。その違いはまさに、心を自分でどこまでつかみとり、それを自分のコントロール下に置いたかの違いでしょう。
では、心の状態を自分で決めることができるとして、それのどこが素晴らしいことなのか、可能性となるのか、その点について書いていきたいと思います。
人の人生は、自分の心の在り方によって、その状態によって決まります。心の中に、
「こうありたい」「こうなりたい」と描いた方向に、これから歩む人生がつくられていくということです。もちろん、そのためにかけた努力の質と量や、もとからもっている才能もある程度関係してきますし、その方向に100%、歩むことができるかどうかはわかりません。ただ、その方向に向かって人生はできあがっていくのです。
例えば、学校の先生になりたいと願えば、その方向に人生が展開されるでしょう。商売をしたいと願えば、やはりそういう人生になっていくはずです。
自分の心の状態を自分で決めることができ、そして、その決めた心によって人生がつくられていくということは、自分の人生を自分で決めていくことができる、ということです。それはすべての人が持っている可能性です。さまざまな影響は受けながらも、人は自分の人生を主体的に生きていくことができるのは、やはり素晴らしいことではないでしょうか。
不登校の子供が、「自分はダメだ」と自分のことを考えていても、心を自分でコントロールし、自分の人生を決定していく可能性は必ず、その心の中に存在しているのです。そのことをしっかりと、子供に伝えていければ、ある程度、自己否定感を軽くすることができるのではないかと思います。
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