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不登校カウンセリングブログその1190.学校には、工場労働者を生み出すために作られた面もあります―子供が不登校になる背景の一つ―

更新日:2022年10月21日

 


 先日、久しぶりにアルビン・トフラーの著書を読みました。アルビン・トフラーは、アメリカの評論家、未来学者であり、日本では1980年に出版した著書「第三の波」などがよく知られています。


 アルビン・トフラーは、工業社会の裏カリキュラムとして、

1 時間を守ること

2 命令に従順であること

3 反復作業を嫌がらないこと

を挙げています。これらは、ベルトコンベア・システムの流れ作業に従事する工場労働者に求められる資質です。


 これらの資質を見ると、近代に作られ、現代にまで通じる学校教育システムには、工場労働者を育成するという面があることがわかります。時間割を決め、チャイムとともに授業を開始し、先生の言うことに従い、読んだり書いたり、計算したりする「反復作業」を行っていきます。その過程の中で、工場労働者に求められる資質が備わっていきます。


 現代の学校教育システムの原型は、産業革命の頃のイギリスにまでさかのぼることができます。1870年に、ウイリアム・エドワード・フォスターが小学校教育法を定めるまでは、庶民に教育が行われることはなく、教育は貴族などの上流階級の独占物であったのです。


 産業革命以前は、農家に生まれた子は農家になり、職人の家に生まれた子は職人になりました。幼い時から家の手伝いをし、必要なことは親から学んでいたのです。「家庭内教育」です。


 しかし、産業革命によって、大量の工場労働者が必要となりました。工場労働者は、アルビン・トフラーが述べているような資質が必要です。19世紀の社会学者、アンドリュー・ウールは、


「農民の子でも職人の子でも、あらかじめ産業制度用に育てられれば、あとの仕込みの手間が大幅に省ける。すなわち公教育こそ、産業社会には必要である」


という言葉で、工場労働者に必要な資質を身につけさせるための、公教育の必要性を述べています。


 現代の学校教育システムは、こうした大きな流れの中で出来上がってきたことを、頭に入れておくべきです。限りある資源で、上流階級だけではなく、一般の人々にも教育を行うには、現代の学校教育システムは有効に機能していたことは否定できません。上流階級には、個人の家で家庭教師を雇うなどの財力がありますが、一般の人々には不可能でした。

その状況が、一人の教師が多数の子供たちに一斉に授業を行う、現代の教育システムによって変わったのです。


 ただ、日本の場合はイギリスとは少々事情が異なります。日本の場合は、武士階級だけではなく庶民も「寺子屋」で学んでいました。「読み書きそろばん」を一通り習い、江戸時代の日本の識字率は、世界の先進都市であるロンドンよりも高かったのです。


 さて、現代の日本の不登校の話になります。たびたび繰り返していることですが、不登校になるのはさまざまな要因・背景があり、その要因が一つだけということではありません。いろいろな要因が絡み合って起こります。


 ただ、現代の学校教育システムに、工場労働者を生み出すことが目的であることは、子供が不登校になる要因の一つとして挙げられるでしょう。子供の中には、みんなと同じことをやらされることに、苦痛を感じる子がいます。別の表現をすれば、工場労働者など組織で働く人間になることに、苦痛を感じる子がいるのです。始業のチャイムとともに、みんなと一斉に同じことをし、周囲のやることに合わせて生活していくことに、息が詰まるような思いがしてしまって、不登校になる子です。


 そういう子供を、「協調性がない子だ」とか「わがままな子だ」と切って捨てるのは、単純に物事を考えすぎでしょう。個性的であり、そういう学校の環境ではその個性が潰されかねないこともあると、とらえた方がいいのでしょう。


 繰り返しますが、現代の学校教育システムがダメだということではありません。あまり教育費をかけずに、広く人々に教育を行うには、効率的なシステムだと思います。ただ、現代の子供たちとっては、合わない面もあり、部分的に変えていくべき時なのでしょう。








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