水槽で、熱帯魚などを飼っている人はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。水槽で、可愛らしい魚が泳いでいる姿を見るだけで、心が癒されるという気持ちなのでしょうか。私は飼ったことがないのですが、何となくそのお気持ちは分かります。
知人の中にも、水槽で魚を飼っている人がいて、注意しているのは魚の病気だということでした。「エロモナス病」というものがあり、その病気になると魚の呼吸が早くなるなどの症状が現れ、数日で死んでしまうらしいです。その病気を起こす「エロモナス菌」は、水の中に普通に存在している常在菌です。魚にストレスがかかっていたり、水質が悪くなったりすると、その菌によって「エロモナス病」が引き起こされてしまうのだそうです。
そして、水槽で飼っている魚の多くが、そうした病気にかかってしまっている場合、水槽に問題があると考えると、その知人は話していました。数多く魚を飼いすぎていてストレスをかけてしまっているとか、水槽の手入れが悪いとか、そういうことが起きているのではないかと考えて、改善していくということです。
私は、不登校の状況にある子供や親御さんと関わっている仕事をしています。その仕事をしていて感じるのは、「不登校の原因は、子供自身や子育てにある」という考え方への違和感です。主に親御さんと接することになるのですが、「この親御さんの子育ては本当に、問題があったのだろうか。子育てのやり方によって、不登校になったのだろうか」という違和感を感じていました。
しかし、先ほどの水槽の話を聞いていて、その話と感じていた違和感とがつながりました。問題はむしろ水槽、すなわち学校や社会の方にあり、不登校になる子供や、その子育ての方ではない、ということが腑に落ちたのです。
もちろん、不登校の状況や原因はさまざまです。その中には、残念ながら子供自身や子育てに原因がある、ということもあるのでしょう。ただ、それだけでは、全国で19万人にもなる不登校の状況に説明がつかないのです。やはり、学校や社会に原因があると考える方が自然です。
私は基本的に、あまり「自分の環境に問題がある」「社会に問題がある」というふうに考えない方です。そういうふうにばかり考えてしまうと、自分でできる努力をしなくなる危険性があるからです。
ただ、不登校に関していえば、学校や社会に原因があると考えてしまうのです。その原因とは何でしょうか。まだ、この点についてはいろいろ調べ、考えているところですので、その途中経過になりますが、SNSの世界にそのヒントがあると思うのです。
SNSの世界には、ためになる内容は、励まされる内容、ほっこりする内容のものもあります。ただ、他人への悪口や誹謗中傷の内容のものが目立つと感じます。最近見た調査結果では、ツイッターの80%以上が、他人への悪口ということでした。また、SNSで誹謗中傷を受けて自殺した方もおられ、誹謗中傷に対する法制度が必要だと言われるようになっています。
SNSの世界では、他人への悪口や誹謗中傷が行われているということは、それはすなわち、他人の自己肯定感を低くしようとしているということです。そういう言葉が飛び交っているということです。
SNSの世界はスマホやパソコンの世界ですが、現実社会とも関係があります。他人への悪口や誹謗中傷がスマホやパソコンの世界で多いということは、現実社会でも多いということになるでしょう。他人の悪口を言い、誹謗中傷する人は、表面上隠しおおせても、心の中にはそういう思いがあり、それがコミュニケーションの中で出てしまうからです。SNSだけではなくこの現実社会でも、他人の自己肯定感を低めようとする言葉や思いが飛び交っているということになります。
不登校になる子供の多くが、何らかの原因で自己肯定感が低くなっています。自己肯定感が低くなったために、不登校の状況になります。この社会が、他人の自己肯定感を低くしようという言葉や思いが飛び交っているのであれば、感受性の高い子供はそれを感じ取り、不登校になっても不思議はないのではないか、と私は考えるようになっています。
Comments