前回のブログでは、水槽で飼っている魚の群れの多くに病気が見られる場合、水槽全体に何か問題があることになり、19万人にもなる不登校の状況は、子供自身や子育てに問題があるというよりも、水槽、すなわち学校や社会に問題があることを示している、ということを書きました。
今回のブログは、その前回のブログのテーマを引き継いで書いていきます。
自分の子供が不登校の状況にある場合、「この子に何か問題があるのではないか」「自分の子育てに問題があったのではないか」と考える親御さんが多いと思います。そのように考えてしまって、落ち込んでしまうという親御さんのお考えは、「不登校になる原因は家庭側にある」という視点に立ってのものです。
私は、すべての不登校のご家族を知っているわけではありません。ですから、あまりショックを受けないでいただきたいと思いますが、家庭側に何か原因があって、不登校になるということはありえるのでしょう。それは否定しません。
ただ、学校全体や社会全体に問題があるという考え方ですと、「この子に何か問題がある」「自分の子育てに問題があった」というふうに考えてしまうのは、真実を見誤り、必要もないのに落ち込んでしまって、今後の不登校対応を間違ってしまう可能性があります。
学校全体の問題とは何か、社会全体の問題とは何か、今回のブログでは詳しく書く余裕がありませんが、軽く書いておくと、SNSの世界で見られるように、悪口や誹謗中傷によって他人の自己肯定感を低くする言葉や思いが多い、一言でいうと他人への思いやりに少し欠けているということです。
私自身も感じますし、また不登校の状況にある子供と接してきた方が話しているのをたびたび聞いたことがありますが、不登校になる子供は、精神性が高い、優しい子が多い、他人を思いやる子が多いということです。そういう子供が、SNSの世界で見られるような、他人の悪口や誹謗中傷の言葉や思いが多い社会の中に置かれると、嫌になって逃げだしたくなるのは当然ではないでしょうか。その行為が、「不登校」という形になるのです。
その最たるものがいじめですが、いじめだけではありません。相手はいじめのつもりではないにしても、他人をどこか傷つけるような言動をしたり、あるいはクラスの先生がそのような言動をしたりしていれば、それが自分に直接向けられたものでなくとも、感受性の高い子供たちにとっては、学校が地獄のような世界に感じられるのでしょう。
これは皮肉に取らないでいただきたいですが、そういう理由で子供が不登校になっているということは、そういう感受性の高い子供、他人の心が分かり、思いやりのある子供に育ったということであり、「子供に問題がある」というわけではなく、「いい子に育った」ということであり、「子育てに問題があった」というわけではなく、「子育てがうまくいっている」ということになるのでしょう。
繰り返しますが、不登校の原因や状況もさまざまであり、大変失礼ながら、子育てに問題があって不登校になっている場合もあるのでしょう。その場合は、「どこか問題があったのだろうか」とお考えになられて、対応していく必要があると思いますが、そういうケースが19万人すべてとは到底考えられないのです。
学校や社会の状況によって、不登校になっているケースがどれぐらいかは、私にはわかりません。ただ、結構な割合で起きているような肌感覚はあります。ですので、自分の子供が不登校の状況にある親御さんは、あまり落ち込まないでいただきたいと思うのです。「自分のせいだ」と落ち込まれると、本当の問題を見誤ってしまうかもしれないのです。
社会にはいろいろな問題があり、それがいろいろな形で噴出しますが、子供のところに噴出することがしばしばあるでしょう。それは、子供は周囲の影響を受けやすく、「子供」という年代は社会の世相を反映しやすいからです。不登校の子供たちがだんだん増えていく状況は、子供を取り巻く社会に問題があることの証拠でしょう。
以前、文部科学省が「不登校は特別なことではなく、普通に起こりうること」という考えを示しました。普通に起こりうるということは、家庭固有の問題ではないということであり、それは家庭を取り巻く環境、すなわち学校や社会の問題であるということでしょう。
「不登校は子育てに問題があるからだ」という見方が一般的なのでしょうし、その一般論に基づいて、不登校に詳しくない人が、「不登校になったのは子育てのせい」と言うかもしれません。その言葉を受けて傷つくことがあったのかもしれませんが、どうか、ご自身ではそのように考えず、問題はもっと根深く、広いとととらえていただきたいと思います。
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