不登校の状況は、一般に、「混乱期」→「安定期」→「転換期」→「回復期」という段階をへていきます。その中で、「安定期」が最も長くなります。
「混乱期」は、要するに親がわが子の不登校を受け入れて、親子の間の混乱がおさまるまでの段階ですので、それほど長く続きません。親が受け入れさえすれば、混乱はおさまります。「転換期」は、子供が外の世界に関心を持ち始めてから、実際に学校に戻るか、あるいは別の学校に進学するまでの期間です。その期間、塾に行ったり、フリースクールに行ったりすることになりますが、この時間は一般に数カ月ぐらいでしょう。「回復期」は学校に戻って以降の期間です。この期間は、子供が学校に慣れるまで続きますが、そんなに長い期間とはなりません。
しかし、安定期は一般的に一年以上、数年続くこともあります。安定期においては、子供は外の世界に関心を持つ時期ではなく、部屋でゲームやスマホに熱中し、勉強もまずやることはありません。そのため、それを間近で見ている親は、非常に焦ります。「この子は、ゲームばかりやっている。そんなことで本当に、この不登校の状況から脱出できるのだろうか」と焦ります。時には、いら立ちを覚えることもあるでしょう。
また、その間ずっと、表面上は変わらないように見える子供に、不登校の状況が変わるようコミュニケーションをとり続けていかなければなりません。それは一年以上、もしかしたら数年以上、続けなくてはならないのです。
安定期が長くなるのは、安定期初期の子供の心の状態と、安定期末期の子供の心の状態とに、大きな隔たりがあるからです。安定期初期の子供の心の状態は、
1 自分はダメだという自己否定感
2 自分の将来はダメだという絶望感
でいっぱいです。
一方、転換期に移行する直前の子供の心の状態は、
1 自信は十分ではないが、自分はそれほどダメではない
2 将来への不安はあるが、そろそろ前に進んでみようか
という思いになっています。
深い自己否定感を解消していくには、やはり時間がかかりますし、絶望していた将来に希望を見出し、不安ながらも進んでいこうという気持ちになるには、やはり時間がかかります。
そのために、「安定期」はどうしても長くなってしまうのです。
長くなってしまう安定期において、親御さんに求められることは二つです。すなわち、「耐えること」と「信じること」です。
「耐えること」とは、状況が変わるまでの時間に耐えること、いろいろ子供に働きかけても、表立った結果が出ないことに耐えること、結果が出ないように見えることをやり続けることに耐えること、さまざまです。
この段階で、親が耐えられず、解決をあきらめてしまうと、子供は自分独りで、心の中にある「自己否定感」や「将来への絶望感」に直面し、それらの思いを自分で解消していくことになります。それは親が支えるよりももっと、時間がかかるか、最悪の場合、状況が全く変わらなくなる、つまり、不登校が引きこもりになる可能性があります。この時期は、本当に辛いと思いますが、親御さんには耐えていただきたいと思います。
もう一つの「信じること」とは、子供を信じること、親自身を信じること、解決すると信じること、今やっていることが何らかの結果を出すと信じること、です。信じることの力は大きいです。信じるからこそ、自分が願う方向にエネルギーを注ぎ続けることができます。いつ、不登校の状況が終わるのか分からない、安定期がいつまで続くか分からない状況の中では、「信じること」で、その長い期間を耐えることができると思うのです。
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