不登校のように苦しい状況にある人に対して、言葉をかけるのは非常に難しいことです。私も、不登校カウンセラーを経験してきて、不登校の状況の中で、深く傷つき、将来に希望を見出せない不登校の子供とそのご家族に、安易に「大丈夫です!」と言葉をかけることの難しさを、たびたび実感してきました。
そのような状況にある人に、言葉をかける場合、その言葉が相手の心の本当に届くかどうか、注意する必要があります。あまりにも深く傷ついていて、将来に絶望し、希望を見出せない心の状態の場合、心から相手のことを思って言葉をかけても、まず相手の心に入っていかないのです。入っていかないだけでなく、反発されることもあります。
私は不登校のことでの苦しみはありませんでしたが、またそれとは別のことで苦しんだことがあります。最も苦しんでいた時に、「大丈夫だって!」という言葉を聞いても受け入れられたでしょうか。おそらく、受け入れられないでしょう。
2001年の上半期に、NHKの朝のテレビ小説「ちゅらさん」で、そのあたりのことを描いていました。主人公の古波蔵恵理は明るい主人公で、他人に対して悪意を持たず、他人を励ます太陽のような感じの女性でした。
友達と二人で東京の大学を受験して、受験が終わった後、その友達が本当に落ち込んでいて「全然ダメだった」と感想を漏らしました。実際、不合格だったのですが、その感想を漏らした時に恵理が「大丈夫だって!」といつものように励ましました。すると、その友人は、「ダメだったって言っているでしょう!どうして大丈夫ってわかるの?」と少し怒ったように返答していました。その後、恵理もいろいろ経験していき、他人を元気づける時は、以前とは違って、簡単に「大丈夫!」とは言わなくなりました。単に、そういう言葉をかけるだけではダメなんだ、と理解したのでしょう。
「大丈夫!」と言葉をかけることが、必ずしも間違いだということではありません。実際、そう言う言葉をかけてもらって、励まされたという人もいます。注意すべき点は、その言葉をかけて本当に、相手の心の中に入っていくか、その言葉に耳を傾け、心を傾けてくれるか、その言葉によって元気になってくれるか、明るい気持ちになってくれるかどうか、考えることでしょう。
そのためには、相手の心の状態をできるだけよく知り、理解することが必要です。「相手の立場に立つ」ということです。自分と他人とは違う存在ですので、相手の立場に立つことは不可能です。不可能ではありますが、できるだけ相手の立場に立つよう努力して、自分がかけようとしている言葉が本当に適切かどうか、考えていけば、相手を苛立たせるようなことは少なくとも避けることができます。
Comments