幕末、日本にはたくさんの藩校や私塾がありました。そこで若者たちは学問、兵法、剣術などを学んでいました。当時の若者たちは、本当によく学んでいたようで、「数カ月も、布団を敷いて寝た記憶がない。机に向かって勉強し、そのまま机にもたれかかって寝ていた」というような記述を、当時の資料で時々目にします。
それほど情熱をもって勉強していたのは、明確な目的があったからだと思います。当時の若者には、日本の動乱期の中で、将来の日本を背負って立つような人間になろうという、明確な目的がありました。そういう目的があったので、現代からすると常識外れの情熱で、勉強に打ち込めたのでしょう。目的意識がある状態で何かに打ち込むことは、あまり苦になることはありません。
逆に、明確な目的がないまま、何かをやるよう勧められることは、場合によっては苦痛を伴うことがあります。また、ストレスを蓄積させることもあります。
不登校になる子供の中には、目的意識がない状態でずっと勉強してきた子供がいます。その状態に疑問を感じてはいたものの、とにかく周囲の期待に応えなきゃ、と思って勉強し続け、それがある時、疲れてしまったり、やる気を失ったりして、もうこれ以上、学校に行って勉強し続けるのは無理だと感じて、不登校になるのです。
子供によっては、「いい学校に合格する」ということは、ある程度、目的となるでしょう。ただ、物事を深く考える子供は、「じゃあ、いい学校に合格して、その先どうすればいいのだろうか」と考えるので、目的にならないこともあります。
子供たちは、いずれは何らかの形で社会に出ていきます。どういう形で社会に出ていくのか、そこで何をするのかが、勉強する最終的な目的といえるでしょう。そういうことを考える場が、現代の日本にはあまりありません。そこで、家庭でできる範囲で、子供に考える場を与える必要があるのでしょう。将来、こうなりたい、こうしたいと考えるための材料を、子供の周りに整えておけば、その中から、自分が最も興味を引く分野や人を見つけ、それを目的とするかもしれません。
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