子供が不登校になった時、親、特にお母さんは、それまで思い描いていた、子供の進む道が、なくなってしまったような気持ちになっているのではないでしょうか。「うちの子供は、よく勉強ができるから、これから進学校である〇〇高校に進んで、さらに▼▼大学に行って・・・」というような、それまで思い描いていた子供の進路が、不登校の状況によって白紙になってしまったような気持ちになっているでしょう。
子供に対して期待していた進路には、親の価値観が色濃く現れています。その価値観とは、「子供にこうあってほしい」「こういう人生こそがいい人生だ」ということです。その価値観とは別の方向に、子供は歩むことになるかもしれない状況にお母さんは直面し、もしかしたら、その状況をなかなか受け入れられないかもしれません。
この時、最初の価値観に固執していたら、不登校の状況を受け入れることができませんし、時には子供に対して裁きの思いを持ってしまうかもしれません。教育熱心なお母さんの場合、それまでの価値観を変えることが、なかなか難しいでしょう。教育熱心であれば、それだけ子供への期待度も大きいのですから、無理もないことでしょう。
ただ、どこかで、不登校になる前に持っていた価値観から離れ、もっと別の価値観を持たなくてはならない時が来ます。「別に、進学校である〇〇高校でなくてもいい。▼▼大学でなくてもいい。どのような進路であっても、社会に出て、幸福になってくれればそれでいい」というような価値観です。そのような価値観であれば、自分の子供が不登校の状況にあっても、苦しみが和らぎます。
自分の子供が不登校の状況にある時の、お母さんの苦しみの一つには、お母さんが持っていた価値観と、子供の状況とのギャップによる苦しみ、というものがあります。子供への期待と、子供が置かれた状況とにギャップがあると、どうしてもお母さんの心の中に苦しみが起きてきます。
しかし、「うちの子供は、元気でさえいてくれればいい。どんな道であっても、一歩一歩前に進んで、社会に出て幸福になってくれればいい」と思えた時、ギャップによるくるしみが薄れていきます。
それまでの価値観を手放すということは、子供に対して幸福になってほしいという期待を捨てる、ということではありません。子供が幸福になる道は、他にもあるというふうに思えるようになる、ということです。それが「多様な価値観を持つ」ということです。
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