大変なことだと承知していますが、不登校カウンセリングでは、子供のそばにいるご家族、親御さんになると思いますが、できるだけ早く、ご自身の心を安定させていただくようにしています。難しいことです。特に不登校直後においては、子供も混乱していますが、親御さんも混乱しています。これからどうなるのだろうかと、不安ですし、苦しみの気持ちでいっぱいです。そんな時に、「心を安定させてください」と言われて、「はい、そうですか」と簡単にできることではないでしょう。
そのことを承知で、やはり安定するようお願いしていますし、カウンセリングでご家族の心が安定するようなことをお伝えもしています。それは、ご家族の心が安定しないままの状態で、その状態から発される言葉は、子供の心の状態を波立たせてしまうからです。
よく、「あなた、これからどうするの」と、不登校になってそれほど時間がたっていない時に、ご家族が子供に聞くことがあります。これは、子供への愛情から発される言葉でしょう。子供のことを案じているから、その将来のことを真剣に考えているから、そういうことを聞きたくなるのです。
しかし、同時にその言葉には、その言葉を発したご家族の不安も入っています。「これから、この子は一体どうなるのか」という不安が込められています。そのために、そうした言葉を聞くと、その不安を感じ取って、子供もより不安になってしまうのです。
では、こういう時、どういう心から言葉を発したほうがいいのでしょうか。
私の現時点での考えとしては、「信じる」という心から、言葉を発するといいように感じています。「信じる」とは、子供のことを信じ、不登校の状況が変わっていくことを信じ、子供が幸福になることを信じる、ということです。これも、子供への愛情ゆえの心です。愛情があるから、不安にもなりますが、信じることもできるのです。
そして、信じていたら、子供への言葉は、時には子供に反発を招くこともあるでしょうが、子供の不安を軽くし、希望や自信をもつきっかけになります。「あなたのことを信じている」「あなたが幸福になることを信じている」という思いが、言葉という形になり、その言葉を聞けば、子供も安心するでしょう。
そうした言葉をかけて、すぐにそうなるわけではありませんが、根気強く言葉をかけていったら、物語「北風と太陽」で、太陽が旅人の服を脱がせたように、子供の凍てついた心を溶かしていくのだと思います。
Comments