不登校や引きこもりの状況にあるわが子に、その状況から脱出してほしいと願わない親はいないでしょう。もうあきらめてしまっている親も、心の奥底では、そうなってほしいと願っているはずです。
不登校・引きこもりカウンセラーである私も、もちろん子供たちに、なんとか脱出してもらいたいと願っています。
ただ、考えていただきたいのは、どうしてその状況から脱出してもらいたいのか、ということです。どうして、不登校や引きこもりから、脱出してもらいたいのでしょうか。脱出して、外の世界に出ていくとして、そこでどういうことを、子供たちに希望するのでしょうか。
なぜ、こういうことを親御さんに考えていただきたいかと言いますと、不登校・引きこもりの状況を解決する動機づけと、「外の世界に出て、いったいどうなるのか」と疑問に思っている子供たちへの答えを見つけていただくためです。
どうして、不登校・引きこもりを解決することを望むのでしょうか。子供のためですか、それとも親自身のためですか。きつい表現をしてしまって申し訳ないですが、世間体が良くないから、不登校や引きこもりの状況をよくしたいと願ってしまう方も、もしかしたらおられるかもしれません。
このあたりの動機は、子供たちは敏感に感じ取ります。もし、心のどこかに、ご自身のことを考えている部分があるのでしたら、そういう部分はできるだけなくしていき、「わが子に幸福になってもらいたい」と純粋な気持ちになっていただきたいのです。
そして、もう一つ、外の世界に出て子供たちの望むことについてです。外の世界に出ることを願うとして、では外の世界でどのようになってもらいたいのでしょうか。そもそも、外の世界に出ていき、そこで生きていく目的とは何でしょうか。
いろいろな答えがあり得ますが、私は、経験を積むということが、生きていく目的ではないかと考えています。さまざまな経験、楽しいことも辛いことも、苦しいこともありますが、そういう経験を積んで何を感じ、何を考えたか、それが心に蓄積されていきます。その蓄積されたものは、永遠の存在である心の中に、やはり永遠に残ると思うのです。
そのように考えますと、部屋に引きこもっている状態は、そういう経験を数多く重ねることが難しいのです。その状態に意味がないとは思いません。一人静かに自分の心を見つめることにも、意味はあります。ただ、それだけではなく、外に出て、苦しいことや辛いことを含めて、さまざまな経験を積み、それを心にためていって、それがやがてその人にとっての宝になっていく、だからこそ、外の世界に出てもらいたいと思うのです。
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