私はカウンセリングにおいてまず、不登校の状況を変えるために、お母様にご自身の心を平静にしていただくようお願いしています。わが子が不登校という状況に直面して、心が揺れないというお母様はまずいらっしゃいません。「子育てが失敗だった」「これからどうなるのか」という、自己否定の思いや不安で心がいっぱいになり、心が揺れ動いているでしょう。まず、その心を平静にしていただくようお願いしています。
平静にしていただいたら、次には希望を持っていただくよう、お願いしています。希望とは、お子様に対する希望と、お母様ご自身に対する希望です。不登校になったお子様のことをダメな子だ、将来はもう希望がないという思いではなく、「うちの子はきっと大丈夫」「この子の将来は希望がある」という思いを持っていただくことが、お子様への希望です。
また、お母様ご自身に対しても、「一生懸命育てた子が不登校になって、自分の子育ては失敗した」という思いを持っておられるのであれば、「子育てが失敗したわけではない。まだまだ、わが子を支えて幸福な人生となるようにすることができる」という思いに変えていただくことが、お母様ご自身への希望です。
わが子が不登校なのに、そんな風に思えるはずはない、こんな苦しい環境に置かれたら、心の中に希望を持つことはできない、と疑問を持たれるお母様はいらっしゃるでしょう。もしろ、そういうお母様の方が多いのではないでしょうか。
確かに、その通りだと思います。苦しい環境に置かれたら、心も苦しくなります。自信を失わせるような環境に置かれたら、心から自信も消えてしまいます。心は、置かれた環境からの影響を避けることはできません。
ただ、それは心の性質の一つであり、もう一つ、大事な性質があります。それは、心をコントロールする能力であり、環境を変えていく性質、創造していく性質です。心をどのような状態にするかは、その心の持ち主に任されていて、心に描いているビジョンによって環境が変わり、人生が出来上がっていくという性質です。
幼少期、貧しい環境で育った人は多いです。貧しい環境ではやれることは限られています。それでも、自分にやれることを一生懸命やって力をつけ、その環境から抜け出す人はいます。大人になって裕福になった人の中には、幼少期貧しかったという人がいますが、そういう人はまさに、環境を変えていき、創造していく性質を発揮した人です。
そういう人は、貧しい環境にあっても心の中に「貧しさ」をつかまなかったのでしょう。「自分は貧しい環境にある、だからこれからも貧しいんだ」という思いにならなかったのです。貧しさをつかまず、「この環境から脱出しよう、豊かになろう」という思いで心を満たしていたわけであり、だから貧しい環境でも豊かになろうという努力をして、実際その努力を実らせ、豊かになったのでしょう。
わが子が不登校。そうなってからしばらくは、心は揺れます。希望を失います。心は環境からの影響を受けますので、それは避けがたいことです。しかし、時間がたって落ち着いてきたら、心のもう一つの性質を使って、心を平静にし、さらに希望を抱くことは可能だと思うのです。
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