不登校のお母様の中には、不登校に詳しい人から「不登校の状況は、小さな波の上下を繰り返しながら変わっていきます」と聞いている方もいらっしゃるではないでしょうか。小さな波の上下を繰り返すというのは、子供が不登校の状況から小さく前進したり後退したりを繰り返していく、ということです。
家から出ずに、学校に行くことに対してまったく関心を示さなかった子供が、ある時、「学校にそろそろ行こうかな」と関心を示し、今まで全く手を付けなかった教科書を開いて、部屋で勉強し始めます。親としてはうれしい限りです。もうすぐ学校に行けるようになるかもしれない、と期待感が増してきます。
ところが数日たつと、教科書に手をつけることなく、一日ずっとゲームをやっていて、この間まで学校に行くことに関心を示していたのに、まったく関心を失ったように見えます。期待感が増した分、親はがっかりしてしまいます。
これが上下の波ですが、こうしたことは避けられません。どうしても、子供たちは前向きになったり後ろ向きになったりを繰り返すことになります。
なぜなら、心にも、物理でいうところの「慣性の法則」が働くからです。「慣性の法則」とは、止まっている物質は外から力が加わらない限り止まったままであり、あるスピードで動いている物質もまた、外から力が加わらない限り、そのスピードで動いたままになる、という法則です。心にもその感性の法則が働きます。
不登校の状況にある子供たちの場合は、「学校に行きたくない」という思いが長い間、心の中にありました。心の状態の変化によって、その思いが小さくなる時もありますが、「慣性の法則」が働いて、「やっぱり学校に行きたくない」という思いになってしまうのです。それが、上下の波を繰り返しているように見えるのです。
そのため、親御さんとしては、子供の様子の変化にあまり一喜一憂せず、「こうした波を繰り返して、だんだん時間をかけて状況が変わっていくんだ」と、ちょっと腹をすえてお子さんに接していただくのがいいのかなと思います。前向きになって、とても嬉しいと思いますが、あまりにも嬉しいという表現が大きいと、下向きになった時、まずご自身ががっかりしますし、お子様もその様子を見て罪悪感を感じてしまう可能性があります。
もちろん、上向きになっても、何も喜ばないというのでは、子供は「自分に関心がないのか」と思ってしまうかもしれませんので、励ましたり喜んだりするのは必要ですが、その感情をあまり大きく出しすぎず、「まだ、下向きになることもある」と思って、接した方がいいのでしょう。
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