私は、「心の力」があると考えています。忙しく、物質的に豊かな現代に生きていると、「心」とか「心の力」という言葉を聞くと、「心なんてあるのか」「スピリチュアル(笑)?」と思われるかもしれませんが、自分の人生をふり返っても、また他人の人生を見ても、そういう力があると思わざるをえません。
「心の力」とは、「心に描いたビジョンの方向に、未来を変えていく力」です。私は、心の創造力とも呼んでいます。心には現状を変え、未来を変えていく力があります。
社会全体の視点から、「心の力」の存在の有無について検証します。もし、「心の力」がなかったら、今でも人類は狩猟生活を送っていたはずです。狩猟生活から農耕生活へと移り、さらに原始社会から高度な産業社会を実現してきたのは、人類が、「もっと豊かになりたい」「便利な生活にしたい」というビジョンを心に描いてきたからでしょう。そういうビジョンのもと、さまざまな発見や発明があり、それをもとに科学技術を作り上げてきました。
個人の視点からも、「心の力」はあります。引退しました、元大リーガーのイチロー選手が小学生の時に書いた作文などは、見事に「心の力」をあらわした内容です。その中において、「大リーガーとして活躍したい、そのためにはプロ野球選手になって活躍する、そのプロ野球選手になるためにはドラフトで指名されるような野球選手になること、そのために甲子園に出られるよう、野球を毎日頑張る」と書かれています。本当に見事に、将来のビジョンを描いて、そこにどのように向かっていくかを考え、現実に行動しています(当時、365日のうち、野球の練習をしなかったのは5日間だけだそうです)。
こうした「心の力」があるのですから、不登校の解決に使わない手はありません。「心の力」を発揮するための具体的な条件は、
1 心にビジョンを描く
2 そのビジョンに向かって努力し続ける
3 あきらめない
ことです。
1については、説明は不要だと思います。
2についてです。「引き寄せの法則」という法則がありますが、この法則を「何もしないでも心にビジョンを描けば、それが実現する」と解釈している場合、何も引き寄せることはできないでしょう。「心の力」でも「引き寄せの法則」でも、具体的な努力をしないと、そのビジョンは実現しません。
不登校の状況においては、揺れがちな自分の心を穏やかにしたり、不登校に関する資料を読んで知識を深めたり、子供に対してコミュニケーションをとったりすることが、その具体的な努力にあたります。「不登校の状況を解決したい」というビジョンを実現するために必要なことを考え、それを実行していくことです。
「3 あきらめない」が、一番大変なところでしょう。「心の力」があるといっても、その心に描いたビジョンが、あっという間に実現するわけではありません。描いたビジョンにもよりますが、やはりある程度の時間はかかります。また、その間、自分が思い描いたビジョンとは逆の状況になることもあります。
あのイチロー選手も、球団「オリックス」に入団してルーキーのころは、一軍と二軍の間を行ったり来たりしていました。当時のバッティングコーチと、自分のバッティングフォームについて考え方が合わず、なかなか一軍に上がれなかった時期がありました。相当辛かったのでしょう、高校時代の恩師だったと思いますが、イチロー選手が泣きながら、辛さを訴えていたという話を聞いたことがあります。自分の思い描いたビジョンとは、逆の状況になっていく気がして、あきらめかけたこともあるのかもしれません。
不登校でもそういうことはざらにあるでしょう。いくらわが子に働きかけても、状況は変わらない、それどころか反発したり無視したりして、状況がかえって悪くなっていく気がする、ということがあるでしょう。あきらめたくなる時です。
それでもあきらめず、心に描いたビジョンを実現できると信じて、できる努力を続けていくことが、「心の力」を使って不登校を解決していく方法でしょう。
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