不登校の子供たちにも分かっているはずです。自信をつける必要があることも、希望を持たなければならないことも。そういうことは分かっているはずです。分かっているのに、そうした自分になれないというギャップ、そのギャップに苦しみ、なかなか不登校の状況から一歩踏み出せないのが、元気が出てきた段階の、不登校の子供たちの状況です。
不登校の子供たちに元気が出てきて、外の世界に興味を持ち始めてきたら、さらに前に進めるような言葉、励ましや勇気づけの言葉をかけていく必要があります。この時期の子供たちは、「元気は出てきたけれども、自信がない」「外に出たいけれども、はっきりと将来の希望を持てない」という気持ちであり、「また失敗したらどうしよう」という不安です。それらの気持ちや不安を軽くするために、言葉をかけていきます。
ただ、そのような言葉をかける場合、単に、「自信を持ちなさい」「将来への希望を持ちなさい」と話すだけでは、その言葉が子供たちの心に入っていくことはなかなかないでしょう。冒頭で述べましたように、自信を持つ必要があることも、将来への希望を持たなければならないことも分かっているはずです。分かっていながらできないゆえに、苦しんでいるのです。そこが分からないと、そういう言葉は、「絵に描いた餅」になります。
「絵に描いた餅」にしないためにも、この段階でもやはり、子供たちの心に共感する必要があります。この段階の前、つまり元気がなく傷ついているような段階はもちろん、子供たちへの共感は必要ですが、元気が出てきた段階でも、子供たちへの共感は必要です。
もし、希望が持てないなら、その心に共感し、自信がないなら、その心に共感します。希望が持てないんだな、自信をつけられないんだなと共感します。
共感したら、「どうして希望が持てないのかな、自信をつけられないのかな」と考えを深めていけます。不登校になった経緯や、子供の気持ちなどから、その理由を詳しく掘り下げていきます。
例えば、人間関係がうまくいかなくて自信がなくなっていて、外の世界に出るのはいいけれど、またうまくいかなかったらどうしようと自信をつけられないのであれば、そのような心を踏まえたうえで、どういう言葉をかけたらいいか、考えていきます。
どのような言葉にするかは、子供の個性などにもよりますが、例えば、子供の感受性が高く他人に配慮する傾向が強いのでしたら、「若い時はどうしても、他人に配慮する傾向の強い人が損をすることが多い。誠実な人間が馬鹿をみるようなことも多い。だから、また苦しい思いをするかもしれない。でも、そういう傾向は決してマイナスの個性ではなく、むしろ望ましい個性である。実際、大人になっていけば、そういう人は信頼され、人間関係が増えていき、若い時とは逆の状況になる。それまでは耐えることもあるかもしれないけれど、今の自分の個性を大切にしてほしい」というように、子供の気持ちや個性を踏まえた上での、励ましや勇気づけの言葉を伝えていきます。
不登校の子供と接する時に、「共感」が大事なのは、そこからさらに深く掘り下げて、子供自身が「望ましい自分」と現在の自分とのギャップを埋めるにはどうすればいいか、考えることになるからです。不登校のいずれの段階においても、「共感」の姿勢は大切にしてください。
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