不登校・引きこもりの子供の心がとらわれている方向には、二つあります。それは、過去への苦しみか、未来への絶望か、です。
過去への苦しみとは、その状況になるまでに子供が直面してきた苦しみのことです。いじめや人間関係でうまくいかなかったこと、志望校に合格できなかったこと、一生懸命勉強しても成績が上がらなかったこと等に伴った苦しみに、心がとらわれてしまっているのです。
そして、不登校・引きこもりの状況でも、何度もその苦しみが心の中からわき上がってきて、そこから心が離れられない状態になっているのです。
未来への絶望とは、不登校・引きこもりの状況からもう脱出できないのではないか、もうこれからの人生、お先真っ暗なのではないかと、希望を持てなくなってしまっていることです。不登校・引きこもりの状況が続いていくと、社会から孤立していることを嫌でも実感します。何とかしなきゃと思いながら、時間がたっていき、焦りが募っていきます。この状態が続いていくと、「もう何をやってもダメだ」と、その状況から脱出することをあきらめてしまうこともあります。
個人差もありますが、不登校・引きこもりになって、それほど時間が経過していない状況では、過去への苦しみの方が大きいでしょう。不登校・引きこもりのきっかけとなった過去の出来事が、まだ記憶に生々しいので、過去の苦しみにとらわれていることが、比較的多いです。
不登校・引きこもりの状況が長くなると、未来への絶望が大きくなっていきます。その状況が長くなるほど、社会復帰が難しくなり、子供もそのことを実感しますので、未来への絶望が大きくなっていくのです。
不登校・引きこもりの子供たちにコミュニケーションをとる場合、以上のことを理解しておくと、コミュニケーションの方向がより適切になります。過去への苦しみの方にとらわれているようであれば、その苦しみを和らげ、消していくような言葉を伝えていきます。例えば、「いじめは犯罪。あなたは何も悪くない」「志望校に合格できなかったけれど、あなたはよく頑張った。その努力は、何か別の形で報われる」「自分をダメだと思っているけれども、あなたには素晴らしいところがある」というように、その苦しみの内容に応じた言葉を伝えていきます。
未来への絶望に心がとらわれているのでしたら、未来に希望を持てるような言葉を伝えていきます。例えば、「何歳からでも、努力すれば人生を立て直せる」「心には創造力がある。心に明るいビジョンを描いて努力していけば、必ず明るい未来となる」というような言葉です。
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