体の傷と、心の傷は、どちらが早く良くなるのでしょうか。
これは、傷の程度によるでしょう。体の傷も、一生残る傷はありますし、心の傷も、一生トラウマとなって苦しむ場合もあります。一概には断定できませんが、体の傷は目で確認しやすいのに対して、心の傷は見えないものであり、また体の傷は医学の発達によって、「こういう傷はこうなおす」という治療法がある程度確立されていますが、心の傷をなおすことはまだ十分に確立されていないのです。そのため、心の傷は適切な治療法を施すことが、体の傷に比べて難しい、ということが言えるでしょう。
そのため、心の傷をなおす方が、体の傷をなおす場合に比べて、試行錯誤しなくてはならない分、時間がかかると言えるかもしれません。
不登校・引きこもりの状況にある子供たちもまた、何らかの心の傷をもっています。いじめ、人間関係、成績不振、受験の失敗、将来への不安などをきっかけに、心に傷をおってしまっています。
その心の傷をいやしていくことが、不登校・引きこもりを解決するために必要なことなのですが、やはり時間がかかるのです。
まず、どのような心の傷をおっているかを知るために、模索する時間が必要です。先ほども述べましたが、体の傷は見えますが、心の傷は見えません。加えて、不登校・引きこもりの状況にある子供たちは、自らの心の内を明かそうとしません。そのため、心の傷を特定するのに時間がかかります。
心の傷を特定したら、次には薬に当たるものが必要です。不登校・引きこもりの場合は、周囲の人、特にお母様からのコミュニケーションです。これも、どのようなコミュニケーションが適切なのか、子供の個性によっても異なってきますので、適切なコミュニケーションを模索する時間が必要です。
また、そのコミュニケーションを行うお母様も、コミュニケーションに「慣れる」必要があります。カウンセラーから、コミュニケーションの具体的な内容をアドバイスされても、それを適切に子供に施すには、医者が医療行為に慣れが必要なのと同様、やはり慣れが必要です。
適切なコミュニケーションを子供に対して行えるようになっても、子供の心はすぐには変わりません。物理で言うところの「慣性の法則」、すなわち、止まっている物体は止まり続け、ある速度で動いている物体は、その速度で動き続けるような法則が、心にも作用するからです。つまり、心が落ち込んでいたら、たとえ周囲の人から励ますコミュニケーションを行われたとしても、しばらく心は、落ち込む方向に進み続けてしまうのです。
不登校・引きこもりの解決には、このように、どうしても時間がある程度かかるものであり、その時間は、決して焦らず、「必ずよくなる」と信じて、適切なコミュニケーションをとることが、お母様にとって必要なことです。
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